シンポジウム(ZOKEI講座)の概要
グランドテーマ「芸術と商業」
芸術とは非営利活動、芸術家は清貧の求道者、商業は営利活動、商人はお金を牛耳る俗物…人々の心にそのようなイメージがあります。それは、社会とうまく折り合っていけない社会的弱者としての芸術家、その孤高の純粋性に対するある種の憧れ、社会とうまく立ち回っていく社会的強者としての商人に対する嫉妬や侮蔑という期待が、そのイメージを支えているようです。しかしながら商売と絶縁して芸術家はどうやって食べていくのでしょうか。イノベーション精神のない商人が厳しい競争社会で生き残れるでしょうか。芸術家も商人も柔軟でタフな精神が求められます。
このシンポジウムは大学教育の現場から発せられ、社会の現場の実務者との議論を通して、芸術の商業行為、商業の創造行為、そのクロスオーバーするポイントを探っていきたいと企画されました。
第1回
「芸術の不純」ではこのベーシックな葛藤を解きほぐします。
第2回
「プロってなに?」ではすべてが曖昧になり迷走する現代においてひとつの判断を探ります。
第3回
「作者はダレだ!」ではオープンソースとコラボレーションの精神とアノニマス・デザインへの認識を問いかけます。
第4回
「商業というクリエイション」ではコンテンツ産業と流通産業の未来を見据えたイノベーションの可能性を考えます。
第1回テーマ:「芸術の不純」〜応用芸術の挑戦〜
5月27日(火) 17:00〜20:00
作品の価値を測るもの、保証するものは何でしょう?売買価格?人気?そんなもので測られることを潔しとしないならば、誰にも理解されない孤高の純粋性を求めるのでしょうか。芸術性とエンタテイメント性は水と油?求められるものに応える創作活動は純粋ではないのでしょうか?
芸術教育の分野にはながらく「純粋芸術」と「応用芸術」という区分がありました。前者はfine art=絵画や彫刻に代表される古典的な枠組み、後者はapprication art=デザインを指し示しています。この呼称から「apprication artは不純なのか?」という疑問が起こります。しかしながら人々が生きる社会に実務的に介入しているのは圧倒的に「不純な芸術」です。いまいちど、芸術における「純粋」の意識と葛藤を解きほぐします。
第2回テーマ:「プロってなに? 」〜プロを育てる仕組み〜
6月17日(火) 17:00〜20:00
インターネット上に限らず今日の社会には発表の場が増え、誰でも比較的容易に公共の場で作品や腕前を披露することができます。誰もが手軽に情報を得ることが出来、人間の技術を補い支援する機械や装置が発達し、ハイ・アマチュア層が増え、アマチュアとプロフェッショナルの垣根はどんどん低く曖昧になっているかのようです。このような時代に立つ「プロフェッショナル」とは何でしょうか。確定申告の内容がそれを証明するのでしょうか。かつては「プロ・デビュー」とは一生を決める重大事でした。「プロといってしまえばプロだし。アマといってみればそうかも…」というユルさを彷徨う現代にあってなお期待される「プロの登場」とはどのようなことなのでしょうか。
第3回テーマ:「作者はダレだ!」〜web時代の創作と評価〜
7月1日(火) 17:00〜20:00
インターネット・メディアにおいてweb2.0と呼ばれる双方向コミュニケーション技術の発達/普及により誰もが作者として発表の場を持ち、みんなで作品を育て変化させていくプロジェクト型作品(あるいはサービス)が恒常化しています。一部に損害を与え、倫理観と合法性が問われる事件も耳目を集めます。しかし今日のコンピュータ技術はオープンソースという考えのもと、互助組織的に改良されてきたたまものです。ここに「利権」をめぐる軋轢が生じるのです。「誰の発案か」を巡り特許、著作権が競い合われます。作者はダレだ!?という問いと同時に、作者を護るべきか、どのように護れるのか、これも倫理と技術にまたがる大きな課題です。
第4回テーマ:「商業というクリエイション」〜未来の観客と出会う〜
7月19日(土) 14:00〜17:00
ものを作る事だけが創造行為ではありません。ものごとが成立する文脈をプロデュースし、流通する構造をマネージメントすること、すなわちメディアをデザインすることもまた重要な創造行為といえます。コンテンツはアーティストやデザイナーが、メディアはプロデューサーが担うという分担分業制に留まらず、プロデュースやマネジメントの能力を持ったコンテンツ・クリエイター、コンテンツのビジョンを持ったプロデューサーやマネージャーがイノベーション(を巻き起こしています。これまでのマーケティング手法ではあがってこないマーケットを開拓する。ニッチな市場をターゲットにした新しい産業も起業されています。芸術と商業の純愛は実現するのか。純愛を長く続けられるのか。連続シンポジウムの最後に、最初の疑問に立ち返って何が明らかになったのかを整理します。
※イノベーション:新しい技術の発明だけではなく、新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革
(引用:wikipedia)
|